配車ウーバー、イギリスで運転手に最低賃金など保証へ

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配車サービスの米ウーバーは、イギリスでアプリに登録している7万人の運転手に対し、最低賃金や有給休暇、年金などを保証すると16日発表した。

今後は、政府が定める「全国生活賃金」にあわせ時給を8.72ポンド(約1320円)に、4月からは8.91ポンドに引き上げる。

イギリスでは、運転手の立場をめぐり2016年からウーバーを相手取った裁判が続けて起こされ、2月にウーバーの敗訴が確定していた。

ウーバーは今回の措置について、労働者の権利に関し、新たな段階に移行したと述べた。ただ、不十分だとの声も上がっている。

また、同社は米カリフォルニアで同様の措置を命じる判決が出た際、利用料金の値上げを行っており、イギリスでも値上げされるだろうと指摘する声もある。

労働組合や雇用専門家は、ウーバーの今回の動きはギグ・エコノミー(単発で仕事を受注して収入を得る業務形態)に大きな影響を与えるとみている。ウーバー運転手の弁護人を務めていたレイチェル・マシーソン弁護士は、「とても重要な一歩となった」と語っている。

2月の最高裁での審理でウーバーは、自社は第三者の予約仲介業者であり、運転手は個人事業主だと主張した。

しかし最高裁は、運転手を「ワーカー(Worker)」と位置づけた。ワーカーは正式な被雇用者ではないが、最低賃金や有給休暇、年金などが保証される地位を指している。

ウーバーは世界各地で、運転手を個人事業主とみるか否かについて、運転手などから訴訟を起こされている。

ワーカーの権利

ウーバーは17日から運転手への支払い額を引き上げる。また、今後は上限ではなく下限を設けると述べた。

この引き上げは、病気やけが、出産、育児などに対する保険とは別に実施される。こうした保険は2018年からすべての運転手を対象とし、無料で提供されている。

ウーバーの発表は以下の通り。

  • 運転手の年齢に関わらず、配車予約を得た後の手数料などを差し引いた運転手の受け取り分を、少なくとも全国生活賃金(25歳以上向け)の金額とする
  • 有給休暇については、全ての運転手に対し、過去2週間の売り上げの12.07%を支払う
  • 運転手は自動的に年金スキームに登録され、ウーバーと運転手がそれぞれ年金を支払う
  • 病気やけが、出産、育児などをカバーする無料保険は引き続き適用する
  • 運転手は引き続き、勤務時間や場所などを自由に選べる

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最高裁判所の前でプラカードを掲げる元ウーバー運転手のジェイムズ・ファーラーさんとヤシーン・アスラムさん

最高裁は2月、アプリを立ち上げてから閉じるまでの間は運転手を「ワーカー」と見なすようウーバーに命じた。

運転手は配車予約待ちの間もアプリを立ち上げているが、この間は賃金が発生していないため、最高裁の判断は重要なポイントとなる。

ウーバーはこれまで、運転手がワーカーと認められた場合、乗客が車内にいる間だけワーカーの資格があるとみなすと述べていた。

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ウーバーの方針変更の影響はギグ・エコノミー全体に広がっていくとの見方が出ている

運転手の立場をめぐってウーバーを訴えていたジェイムズ・ファラーさんとヤシーン・アスラムさんは、最高裁の判決を歓迎した一方、ウーバーはまだ運転手を「不当に扱っている」と話した。

最高裁の決定では、運転手にはアプリを立ち上げてから閉じるまでがワーカーの資格があるはずだが、ウーバーは現在も、配車予約が入ってから乗客が降りるまでの間しか認めていないという。

また、ウーバーは一方的に、最低賃金から運転手の手数料ベースを決定していると指摘。双方の合意が必要はなずだと批判した。

ギグ・エコノミーへの影響

雇用の専門家らは、ウーバーの方針変更の影響はギグ・エコノミー全体に広がっていくと話している。

ウーバー訴訟で運転手を代表したレイ・デイ法律事務所のナイジェル・マケイ氏はBBCの取材に対し、「この疑義のある雇用モデルを使っている企業は他にもたくさんある」と指摘した。

「そうした企業は今回の決定を見て、『待てよ、ウーバーが諦めて運転手をワーカーと認めたのなら、うちではいつまで運転手にそうした権利はないという議論を続けることができるだろうか』と考えるだろう」

雇用を専門とするメアリー・ウォーカー弁護士も、アプリ利用者への支払いが増えることで、「いくつかのギグ・エコノミーは商売ができなくなるだろう」と話す。再建できる企業も出てくるだろうが、その場合、利用者は少なくなるかもしれないと述べた。

ギグ・エコノミーを展開する企業は変わるべきだという声は労組からも上がっている。全国都市一般労組(GMB)のミック・リックス会長は、「偽りの個人事業への道はこれで終わりだ」と語った。GMBも、ウーバー訴訟に原告として携わっていた。

「GMBが4回勝訴してやっと、ウーバーが事態を理解したのは残念なことだが、それでも我々は組合員のために大きな勝利を得た。ほかのギグ・エコノミー企業も注意するべきだ」